アクシデントは突然に (後編)
110番で来たお巡りさんが、別に事故の検証をする係を呼ばなければいけない、というので鑑識係のようなチームが来るのを待った。
事故について色々調べていてわかった、自転車対車で怪我が無かった場合は、物損事故、どちらかに怪我があった場合は、人身事故になるそうだ。
私の場合、少年が怪我をしている可能性があるので、人身事故班も来たようだ。
その場で怪我がなかったからといって人身事故班を呼ばずに、物損事故だけで処理した場合、後から後遺症などが出てきて、人身事故に切り替えたくなった時、再度事故の当事者や目撃者などを召集して、現場検証をする必要があるらしい。
それはほとんど不可能らしいので、怪我はなさそうでも、いつ人身事故に切り替えられても対応出来るように、念のために人身事故チームを呼ぶのだそう。
お巡りさんに「私にも過失はあるんですか? 点数引かれたりするんですか?」と聞いたら、「過失があった場合は点引かれます。詳しい事は係が分析してから決めますので、私からは何も答えられません」
とのこと。
結局私の審判はだいぶ先になるということらしい。
少年の母は事故を目撃していないので、やはり息子が怪我をさせられたと思っているのだろう。
私に対して謝る気配はサラサラない。
「念の為病院で見てもらった方が…。」
と私が言ったら、
お巡りさんに
「あのぅ、病院代はどうなるんですか?」
と、診察費の支払いは当然運転手でしょ、という態度だった。
するとおまわりさんが、
「怪我はないということですが、念のためという事ですので、それはお母さんご自分で払って下さい。運転手さんに支払い義務はないですよ」と、キッパリ言ってくれた。
交通事故の場合は、保険が使えないので病院代が高額になるかもしれない。
私は、
「通学中の怪我ですから、学校の共済でお金が出るかもしれませんよ。病院に交通事故といって、領収書もらわれてみては?」
と助言した。
警察が
「とりあえず早めに病院に行って状況を知らせて下さい」
と、少年と母親を促し、警官の名刺をくれた。
少年の母親が「連絡先を教えて下さい」というので、お互いに連絡先を教え合い、その場は早々に立ち去った。
少年が軽傷そうでよかった、とほっとしたものの、ふと我に戻り車のバンパーを見た。キズだらけ。
衝撃が大きかったのかバンパーは、車のボディーから一部外れブランとなっている。
このキズの修理はまさか自腹?!ほんと もらい事故。こっちは何も悪くないのになんで? だんだん腹がたってきた。
でも、少年が怪我しているかわからない状況で「車の修理はどうなるんですか?」と口にする事はできなかった。
警官が私の車の写真を撮っていたので、検証の結果、この事故でできたキズと判明すれば何らかの
保障はあるだろうと希望を持った。
そして、帰宅。
保険屋さんに相談した。
保険屋さんの見解は、私に過失はないので、保険の適用はない、ということだった。
つまりは、すべて自分で交渉する、ということ。
(弁護士特約を付けていなかったのでそうなる)
けっこうなストレスを感じながら、少年の母に電話して、息子の診察結果を聞いた。幸いにも打撲や骨折はないらしく、診察の後 登校したという。
母親は警察から、少年の方が加害者であること、車の修理代が発生する可能性があること、などを聞いていたのか、声のトーンも低く、最後にやっと「すみませんでした」と状況が飲み込めたようだった。
少年の父親が入っている保険を使って保障をする、という事で、最初の電話が最後の電話となった。
その日の夕方、相手方の保険会社から電話があり、聞き取り調査。
車修理の見積もりを出してくれという話になった。
出すものを出し、結果を待った。
そして やっと返事が来た。
修理代全額保険支払い、ということで私の過失はなし。100 対 0 !
当然なんだけど、嬉しい。
車は現在修理中。
約一週間ほどかかる。
今回は目撃者がいたことで、相手の危険運転が証明された。
少年は道交法違反(前方不注意)で送致されるらしい。
少年にはいい経験になったと思う。今後は安全運転で自分の命も人の命も大切にしてほしい。
私は、この二週間 ずっと雲がかかった空をみているような、心が風邪をひいているような暗い毎日だった。
もう、二度とあの事故現場は通らない。
より一層安全運転、ドラレコを付けよう、と決めた。
そして、事故をみたら積極的に目撃証言しよう。
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