悪女ミポリン~前編~
※少し長くなるので、前編・後編に分けます。
出産するまで働いていた職場の話。
そこは地元では大きな出版社の関連会社だった。
私は派遣で。
配属先は「校閲」。
部内は社員か契約社員だけど、掃き溜めみたいな雰囲気で定年間際の人ばかりだった。
そして、実験的に若い人を派遣で雇ってみてはどうか、という話になり私が派遣1号(当時30才)として採用された。
私が使えないやつだったら3ヶ月で切り派遣は利用しない、使えたらさらに派遣を雇う、ということだった。
結果、たくさん派遣を雇うことになった。
そしてやってきた若くて愛想のいいミポリン(派遣27才)。
ミポリンは、家が調剤薬局を経営していて、自分は病院の院長秘書をしていた。元彼は医者というのがお約束のプロフィール。
校正の仕事に興味があったので親のコネを使い、わざわざ院長秘書を辞めて派遣に登録し、やってきた。
ミポリンは見た目、とにかく色っぽい。ムチムチしていて、壇蜜を少しポッチャリさせた感じ。
これは、もう男性社員はイチコロ。
唇はいつもプルプルで半開き、髪はゆるふわ。私服は露出高め、冬でもノースリーブ肩出し(モコふわニット)にストール。
ややマダム風。
ミポリンは男性社員から受けがよく、いつも廊下で立ち話、サボっている。
彼女のいない独身男子はミポリンまっしぐら!!!
でも勤務しはじめてすぐ彼氏ができた。
ミポリンと親しくなりたい男性社員(女たらし既婚)が「彼氏紹介するよ」と誘って。
医者彼と別れた直後だった傷心のミポリンは、すぐ誘いにのった。
ミポリンは、
「私いつも『つきあってください』って言われるんですよぉ。自分から言ったことないんです。でも毎回フラれるんです。」
と言っていた。
今回も即行「つきあって下さい」と言われたらしい。
私が
「どうしてフラれるの?」
と聞いたら
「わたし、中身がないんです。」
だって。
「フラれる時は、毎回同じこといわれます。『もっと自分がある人かと思ってた。ミホちゃんは中身がない。想像していた人と違う』って。」
確かにその通りだった。
八方美人で、とにかくいつも男に囲まれていたいタイプ。バブルの頃でいうなら、アッシー、めっしーがいる女。
入社早々(一週間)にも関わらず、間髪入れず会社関係者の彼氏ができたのはさすがプロ!
でも周りには「彼氏いません」と言っていた。
彼女曰わく、彼氏は元社員なので、周りの人から色々言われるのが嫌だからだそう。
その言葉を真に受け、ミポリンに速攻近づいたのが、社内の評判ワーストワンの独身A。
Aは、用もないのに「校閲」にやってきては油を売る。
ミポリンに仕事をふる時は超丁寧。いつもデレデレ。
私に依頼する時は、ろくに会話もせず原稿袋を机にポンっ、すぐ立ち去る。
ミポリンも彼氏がいるくせに、Aを見ると
「Aさ~んッ。おはようございまーす。」ニコッ。
A、絶対勘違いする。
私は、Aが
「ミポリンは運命の人、昔の彼女の生き写し。最初見た時、彼女本人かと思った。いずれ告白する」
と言っていると聞いた。
(Aの元カノを知っている人に、ほんとにミポリンに似ていたか聞いたら「全然似てない、ミポリンの方が可愛い」と言っていた。恐ろしや、人の記憶の美化)
私は彼女に、Aが本気になっているっぽいから、あまり期待させるような事はしないほうがいいとおもう、と忠告した。ストーカーみたいになったら怖いからね。
バレンタインチョコはあげないか、義理チョコって、わかるのにした方がいいと思う、とも。
今思えば、私っておせっかいだったな。ほっとけばよかった。
ひがみとかではなく、ほんとにAはギャンブル好き、女好きでろくでもない奴だったので、関わらない方がいい、という事を伝えてあげたかっただけ。
そして、バレンタインデーがやってきた。
後編へつづく
.
このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。